成年後見の申立の依頼を,弁護士・司法書士以外が業として受けると処罰されます
成年後見制度を利用する場合,申立書面を家庭裁判所へ提出しなければなりません。この際,非常に多くの資料の提出が必要となります。時間がなかったり,作成する自信がない場合などは,司法書士か弁護士に依頼することにより申立書面を代わりに作成してもらえます。
登記手続き・裁判所に提出する書類(成年後見申立書・相続放棄申述申立書・遺言の検認申立書など)の作成を
『弁護士・司法書士』以外の士業に依頼することはできません。
後見申立てに必要な,財産目録のみといった一部の書類の作成,も弁護士・司法書士以外の士業が行うことはできません。裁判所に提出する書類であり,申立書面の一部だからです。
『弁護士・司法書士』以外の士業が業務として(報酬をもらって)申立書類の作成の依頼を受けた場合,弁護士法違反・司法書士法違反の非弁行為・非司行為となり,懲戒処分の対象となります。また,業務として行っていなくても反復継続して書類作成を行っている場合も同様です。
さらに,
弁護士法77条により,『2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する』
司法書士法78条により『1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する』
とされ,刑事事件における処罰の対象となります。
実際に,弁護士・司法書士以外の士業が,成年後見制度のきちんとした説明もないまま,業務として(報酬をもらって)申立書面の作成提出を行い,本人だけでなく申立人やその親族の方々が,取り返しのつかない状況に追い込まれてしまっている事案がありました。作成した士業の方を含め,関係者全員が大変なこととなっており,親族の方々は本当に気の毒でした。
相談者の方々も士業の方々も,後々『こんなはずではなかった』という事にならないよう注意することが必要です。
一度申立てをして後見人等が選任された後に,『やっぱり申立てをやめたい』と裁判所に主張しても,容易には認められません。
実際に成年後見業務を行っており,この制度を利用した場合にどうなるのかをしっかり説明してくれる,信頼できる弁護士・司法書士に依頼しましょう。
<罰則規定の根拠条文>
司法書士法73条1項 司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は,第3条1項第1号から第5号までに規定する業務を行ってはならない。
司法書士法3条1項 司法書士は,この法律の定めるところにより,他人の依頼を受けて,次に掲げる事務を行うことを業とする。
1 登記又は供託に関する手続について代理すること。
2 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし,同号に掲げる事務を除く。
3 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
4 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成16年法律第123号)第6章第2節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
5 前各号の事務について相談に応ずること。(以下略)
司法書士法78条1項 第73条第1項の規定に違反した者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。